削る、彫る、編む。
暮らしに迎える、アフリカの手仕事
暮らしに迎える、アフリカの手仕事
木を削り、かたちをつくる。
ひとつの像を彫り出す。
植物の繊維を、ひと目ずつ編み重ねる。
アフリカの各地には、その土地にある素材と、
人の手から生まれてきたさまざまな
道具や造形があります。
整いすぎていない輪郭や、残された削り跡。
均一ではない編み目や、使い込まれた木肌。
ひとつひとつ違うその表情は、
工業製品とはまた違った存在感をもち、
現代の暮らしに取り入れてみると、
不思議なほど自然に馴染むことがあります。
今回は、スツール、木彫り像、バスケットから、
アフリカの手仕事を見る楽しさと、
暮らしへの取り入れ方を考えてみます。
低く構えた座面に、太さも角度も異なる脚。
アフリカのスツールを眺めていると、まず目に留まるのは、そのおおらかな造形です。一木から削り出されたものには、木をつなぎ合わせてつくられる家具とは異なる、塊としての力強さがあります。
けれど、よく見るとその表情は一脚ずつさまざま。
座面がわずかに反っていたり、脚が少し外側へ開いていたり。削り跡が残るものもあれば、長く使われるうちに角が丸くなり、艶を帯びたものもあります。
座面に残る刃物の跡や、左右で異なる脚の角度。完成した姿だけでなく、そこへ至るまでの手の動きまで想像させるところも、一木から生まれるスツールのおもしろさです。
「どれが整っているか」より、木の表情やプロポーションを見比べながら、自分の目に留まる一脚を探してみる。
暮らしの中では、腰掛けとしてだけでなく、ソファ脇のサイドテーブルや花器を置く台としても。用途をひとつに決めず、置く場所や合わせるものによって役割を変えられるのも、小さなスツールならではの楽しさです。
人の姿をかたどった、小さな木彫り像。
細長いもの、ずんぐりとしたもの。
大きな頭や短い腕、左右で少し違う目元。
人の手で彫られたものには、きれいに整えられた造形とは違う、独特のリズムがあります。
鼻や目、腕の一本まで、左右がまったく同じではありません。そうした小さな揺らぎが、木の像にどこか人の気配を感じさせます。
少し不思議で、どこか愛嬌がある。
見る角度を変えるだけで印象が違って見えるのも、木彫りならではです。
棚の上にひとつ置く。
本や花器と並べる。
あるいは、何も添えずにぽつんと佇ませる。
小さなものでも、その姿には空間の視線を引き寄せる力があります。
選ぶときは、顔つきや姿勢、木肌までじっくりと。
理由はうまく説明できなくても、なぜか気になる。
そんな一体との出会いも、手仕事のものを選ぶ面白さなのかもしれません。
木の造形とはまた違った軽やかさを見せるのが、植物素材を編んでつくられるバスケットです。
連続する編み目がつくる模様。
少しずつ異なる高さや口の広がり、底のかたち。
おおよそのサイズが近くても、並べてみるとひとつとして同じ姿には見えません。
編み目を追っていくと、一定のリズムの中にもわずかな強弱があります。均一に整えすぎない表情から、人の手で編み進められたものならではの温度が伝わってきます。
規格から選ぶというより、柄やかたち、置いたときの佇まいまで含めて選びたくなる道具です。
ブランケットや雑誌などをまとめたり、日用品の収納に使ったり。鉢皿や防水性のあるインナーポットを使えば、植物まわりに取り入れるのもひとつです。
もちろん、何も入れず、その編み柄を楽しむように置いても。
収納するという役割だけにとらわれないことで、バスケットもひとつのオブジェのように見えてきます。
木を削ったスツール。
人の姿を彫ったオブジェ。
植物素材を編んだバスケット。
それぞれに存在感がありますが、同じ空間へ取り入れてみると、その違いがかえって互いを引き立てます。
たとえば、重厚な木のスツールのそばにバスケットを置く。
木の塊がもつ力強さに、編みの軽やかさが加わることで、空間の印象が少しやわらぎます。
反対に、バスケットや植物など自然素材の多い場所へ木彫り像をひとつ。素朴な素材同士でありながら、異なる造形が入ることで、景色にほどよい緊張感が生まれます。
アフリカのアイテムだけで、空間を揃える必要はありません。
いつもの家具のそばへ、ひとつ取り入れてみる。
見慣れた景色の中に異なる質感が加わるだけでも、その存在感を十分に楽しめます。
手でつくられたものを見ていると、形の揺らぎや小さな跡まで、そのものの一部に見えてきます。
どこの国の、どの種族のものか。
いつ頃つくられたものか。
そんな背景を知ることもひとつの楽しみですが、それだけが選ぶ理由でなくてもいいと思います。
素朴な削り跡が好きだった。
編み柄に目が留まった。
置いたときの佇まいがよかった。
そんな感覚から選んだものほど、暮らしの中で長く気になる存在になることがあります。
収納のためだけではなく、椅子としてだけでも、飾るためだけでもない。
柄や形、素材の表情、置いたときの姿まで含めて選ぶ。
遠い土地で生まれた手仕事を、自分の暮らしの風景へ迎え入れる楽しみです。