削る、彫る、編む。
暮らしに迎える、アフリカの手仕事

Crafts from Africa

木を削り、かたちをつくる。
ひとつの像を彫り出す。
植物の繊維を、ひと目ずつ編み重ねる。

アフリカの各地には、その土地にある素材と、
人の手から生まれてきたさまざまな
道具や造形があります。

整いすぎていない輪郭や、残された削り跡。
均一ではない編み目や、使い込まれた木肌。

ひとつひとつ違うその表情は、
工業製品とはまた違った存在感をもち、
現代の暮らしに取り入れてみると、
不思議なほど自然に馴染むことがあります。

今回は、スツール、木彫り像、バスケットから、
アフリカの手仕事を見る楽しさと、
暮らしへの取り入れ方を考えてみます。

01. 削る|一木から生まれるスツール

低く構えた座面に、太さも角度も異なる脚。

アフリカのスツールを眺めていると、まず目に留まるのは、そのおおらかな造形です。一木から削り出されたものには、木をつなぎ合わせてつくられる家具とは異なる、塊としての力強さがあります。

けれど、よく見るとその表情は一脚ずつさまざま。

座面がわずかに反っていたり、脚が少し外側へ開いていたり。削り跡が残るものもあれば、長く使われるうちに角が丸くなり、艶を帯びたものもあります。

丸みを帯びた座面や素朴な削り跡が特徴で、日本では特にスツールが人気です。
ソファ横、ベッドサイド、玄関先など、置き場所を固定しすぎずに使えます。

座面に残る刃物の跡や、左右で異なる脚の角度。完成した姿だけでなく、そこへ至るまでの手の動きまで想像させるところも、一木から生まれるスツールのおもしろさです。

「どれが整っているか」より、木の表情やプロポーションを見比べながら、自分の目に留まる一脚を探してみる。

暮らしの中では、腰掛けとしてだけでなく、ソファ脇のサイドテーブルや花器を置く台としても。用途をひとつに決めず、置く場所や合わせるものによって役割を変えられるのも、小さなスツールならではの楽しさです。

Tonga Stool 002|トンガ族

支柱を組んだような独特の脚部と、厚みのある座面が印象的。実用品でありながら、ひとつの彫刻を見るような存在感を楽しめる一脚です

Senufo Stool 005|セヌフォ族

上下に広がる円錐形と、片側に伸びるリング状のハンドルが特徴。中央に刻まれた模様も含め、見る角度によって表情が変わるユニークな一脚です。

Hehe Stool 007|へへ族

小ぶりで素朴な佇まいのへへ族のスツール。座面に残る削り跡や、わずかに不揃いな脚のかたちに、人の手で削り出されたものならではの表情が残ります。

02. 彫る|ひとつひとつ異なる、木彫りの表情

人の姿をかたどった、小さな木彫り像。

細長いもの、ずんぐりとしたもの。
大きな頭や短い腕、左右で少し違う目元。

人の手で彫られたものには、きれいに整えられた造形とは違う、独特のリズムがあります。

鼻や目、腕の一本まで、左右がまったく同じではありません。そうした小さな揺らぎが、木の像にどこか人の気配を感じさせます。

少し不思議で、どこか愛嬌がある。
見る角度を変えるだけで印象が違って見えるのも、木彫りならではです。

赤みを帯びた胴体と淡い顔料が残る白色のバイカラーが、存在感を強めています。

棚の上にひとつ置く。
本や花器と並べる。
あるいは、何も添えずにぽつんと佇ませる。

小さなものでも、その姿には空間の視線を引き寄せる力があります。

選ぶときは、顔つきや姿勢、木肌までじっくりと。

理由はうまく説明できなくても、なぜか気になる。
そんな一体との出会いも、手仕事のものを選ぶ面白さなのかもしれません。

魔除け木彫り像 006|アダン族

角ばった頭部と力強い体格に対して、短く小さな腕がどこか愛嬌を感じさせる一体。荒削りな輪郭や白い顔料の剥がれも、長い時間を重ねた表情の一部です。

魔除け木彫り像 005|ロビ族

粗く彫り出された輪郭と、黒褐色へと深まった木肌が印象的。擦れや割れ、丸みを帯びた細部まで、長く使われてきた時間を感じさせる木像です。

魔除け木彫り像 009|アダン族

細く伸びた首と直線的なシルエットに、赤みのある胴体と淡い顔料が残るバイカラー。色の擦れや不均一さまで含めて、ひとつの個性になっています

03. 編む|暮らしの道具としてのバスケット

木の造形とはまた違った軽やかさを見せるのが、植物素材を編んでつくられるバスケットです。

連続する編み目がつくる模様。
少しずつ異なる高さや口の広がり、底のかたち。

おおよそのサイズが近くても、並べてみるとひとつとして同じ姿には見えません。

編み目を追っていくと、一定のリズムの中にもわずかな強弱があります。均一に整えすぎない表情から、人の手で編み進められたものならではの温度が伝わってきます。

規格から選ぶというより、柄やかたち、置いたときの佇まいまで含めて選びたくなる道具です。

柄や形、置いたときの姿を見比べてお選びください。

ブランケットや雑誌などをまとめたり、日用品の収納に使ったり。鉢皿や防水性のあるインナーポットを使えば、植物まわりに取り入れるのもひとつです。

もちろん、何も入れず、その編み柄を楽しむように置いても。

収納するという役割だけにとらわれないことで、バスケットもひとつのオブジェのように見えてきます。

04. 合わせる|異なる手仕事を、ひとつの空間に

木を削ったスツール。
人の姿を彫ったオブジェ。
植物素材を編んだバスケット。

それぞれに存在感がありますが、同じ空間へ取り入れてみると、その違いがかえって互いを引き立てます。

たとえば、重厚な木のスツールのそばにバスケットを置く。

木の塊がもつ力強さに、編みの軽やかさが加わることで、空間の印象が少しやわらぎます。

手軽にインテリアに取り込みやすいアイテム。置くだけで趣のある空間に。

反対に、バスケットや植物など自然素材の多い場所へ木彫り像をひとつ。素朴な素材同士でありながら、異なる造形が入ることで、景色にほどよい緊張感が生まれます。

アフリカのアイテムだけで、空間を揃える必要はありません。

いつもの家具のそばへ、ひとつ取り入れてみる。
見慣れた景色の中に異なる質感が加わるだけでも、その存在感を十分に楽しめます。

手仕事を合わせる、3つの見方

ジンバブエ・ビンガ地方で、トンガの女性たちが一つひとつ手編みでつくるかご。

質感を変える

力強い木素材に、編みの軽さを。異なる素材を合わせることで、それぞれの表情が引き立ちます。

高さを変える

床に置くバスケット、低いスツール、棚の上のオブジェ。視線の高さに変化をつけると、空間に自然なリズムが生まれます。

愛嬌と呼べる要素ばかりのアダン族の人形。その荒削りな輪郭だからこそ、人の温度を感じます。

余白を残す

個性のあるものほど、たくさん並べすぎない。少し余白をつくることで、ひとつひとつの輪郭がよりきれいに見えてきます。

手仕事を選ぶということ

手でつくられたものを見ていると、形の揺らぎや小さな跡まで、そのものの一部に見えてきます。

どこの国の、どの種族のものか。
いつ頃つくられたものか。

そんな背景を知ることもひとつの楽しみですが、それだけが選ぶ理由でなくてもいいと思います。

素朴な削り跡が好きだった。
編み柄に目が留まった。
置いたときの佇まいがよかった。

そんな感覚から選んだものほど、暮らしの中で長く気になる存在になることがあります。

収納のためだけではなく、椅子としてだけでも、飾るためだけでもない。

柄や形、素材の表情、置いたときの姿まで含めて選ぶ。

遠い土地で生まれた手仕事を、自分の暮らしの風景へ迎え入れる楽しみです。

手編みならではの歪みや編み目の揺らぎも、一点ごとの個性です。